エリック物語だね!いきなり電話があったんだ。それは、リー・ディクソン(Lee Dixon)という男で、彼はエリッククラプトンのギターテクニシャンだった。彼は、「手紙を預かっているんだ。エリックがサウンドに問題を抱えていて、君ならなんとかできるんじゃないかって言っている」と言った。彼は2台のツインアンプを使っていたが、それがもはやツインアンプとしての音をださなくなっていると言っていた。
エリックは、フェンダーのバイブロ・キングというアンプを使っていて、ミッドのレスポンスが悪いことに気が付いた。アンプは、ベースとトレブルを切って、ミッドが目いっぱいになっているのにもかかわらず、まだベースとトレブルが大きい。僕はちょっとイコライザに調整を加えて、トレブルのレスポンスを切ってみたが、クリーンで切れのよい音をだしてしまうジャンセンスピーカーのせいで、ミッドまだ十分ではなかった。
確かに調整はある程度助けにはなったものの、 最終的にエリックが自分専用のカスタムアンプを持つことを決めたときには、さすがにうれしかったよ。すべての作業はリー・ディクソンを通して行われた。リーは、とっても協力的で、彼とはトーンだけでなく、機能や外観をどうするかについてもかなりの時間を一緒に費やした。そしてついに僕らは、エリックの古いツインアンプにかぎりなく近くて、それでいてミッドのきいたブルースサウンドを作り上げることができた。スピーカーは、カリフォルニアのサン・ラファエル(San
Rafael)にあるブラウン・ソーン(Brown Soun)というメーカの「トーンタビー」という麻のコーン型を使用した。僕たちは、少なくとも10種類の異なったスピーカーをテストしたが、最終的にこれがエリックの要求に近いものと判断して決めた。
エリックアンプには、チャンネルを2つ作ることにした。チャンネル1は、ボリューム、ベースとトレブルで成り立っている。イコライザは、エリックの1956年製ツインアンプに近いもので、トーンの調整に左右されることなく、温かみのあるミッドレスポンスが効いている。それは、とても単純な、”差し込めばOK”といったものだった。チャンネル2は、ボリューム、ベース、ミッドそしてトレブルだ。
この調整は、いわゆる通常のイコライザよりもずっと複雑なものだった。
各コントロールは、それぞれのチューブステージを持っていて、ワイドレンジコントロールができるので、どんなポジションにしてもいいトーンに達することができる。
出力ステージは4本の6L6出力チューブを使用していて、余裕で80W出力できるクラスA/Bで動作させている。さらに20Wに出力を減らす電源スイッチがある。
キャビネットはバーチの合板で作り、古く見えるように細工したフェンダーツイードで覆った。これが、クイーンズジュビリーコンサートで使用されたアンプで、エリックのギターは、チャンネル2のほうにつながっていた。また、エリックはこのアンプをアルバム・リンゴ(Ringo)のレコーディングや、ブランズハッチでのフェラーリコンサートでも使用した。しかし、その後エリックはアンプをできるだけシンプルにしたいと考えたんだ。それで、今はチャンネル2を取り外したんだ。
もちろん、エリックは当時そのアンプをとっても気に入ってくれていたと思う。ただ、本当に彼が”お誂えスーツ“のようにぴったりの感覚だったかどうか確信がない。なぜなら僕は直接サイズを測ったわけじゃないからね。(彼のスケジュールでは忙しすぎて無理だけど)もし将来的にエリックが何か変更を加えたいと思ったときには、もう一度僕にチャンスをくれることを切望しているよ。 |